大学通信教育は、主に「印刷教材等による授業」(自己学習)と「面接授業」(スクーリング)によって行われることが多く、単位修得試験などの審査に合格することで単位を修得する。単位修得試験は、決して易しいものではないといわれている。
学べる分野は、主に文科系の領域であるが、文科系以外の領域も徐々に学べるようになってきている。 また大学によっては、一定の単位を取得し通学課程へ編入するための試験を受けることができる。
入学者選抜については、学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)の課程では出願時の書類による審査が主流で、入学試験が行われることが少ない。大学院の課程では、専門科目の筆記試験・実技試験を始め、研究計画書の提出を通じた選考や面接試験が行われることがほとんどである。
卒業率・修了率は、各大学の各学科・課程ごとに異なっており、かなりの開きがあるといわれる。
通学課程と比較すると、より多くの人に入学の門戸が開かれているが[1]、自学自習を主体とするため、学生にはより厳しい自己管理が要求されることが多いと考えられる。しかし、個人の学習形態や興味・関心に応じた学習を可能にする制度であることから、高い学習意欲を持った上で卒業を希望する人が卒業できないことは少ないともいわれている。入学はたやすく、卒業は難しいと言われるアメリカの大学に似た性格を持っているといえる。
このような事情は、世界的に共通である。
大学通信教育は、学校教育法に定められた正規の大学である。卒業または修了すれば、通学課程と同様に学位が授与される。
日本において大学通信教育の嚆矢と見なされているのは、明治期に各学校によって刊行されていた講義録である。その最初期の代表例として、法律系では東京法学社(1885年)と英吉利法律学校(1885年)がそれぞれ刊行したもの、文科系では哲学館(1888年)が刊行したものが挙げられる。ただし、講義録とは実際に行われた講義の内容を編纂して刊行するというものであり、今日の大学通信教育課程のようにスクーリングや試験によって単位や卒業が認められるものではなく、その意味で双方向的ではなくいわば一方的な性格のものであった。
現在のような形態の大学通信教育は、1946年3月に学校教育法によって制度化されたものである。1947年10月には法政大学で初めて通信教育課程が開講した。1948年には法政大学・慶應義塾大学において初めて通信教育課程のスクーリングがおこなわれている。当初はまだ社会通信教育的な性格のものであったが、1950年3月に正規の大学教育課程として認可された(この時認可されたのは法政大学・慶應義塾大学の他、中央大学・日本女子大学・日本大学・玉川大学の各課程)。1952年には、法政大学・慶應義塾大学から初めて通信教育課程による卒業生が輩出された。
以降、60年代、70年代と通信教育をおこなう大学は関東地区の大学が多く、関西圏および首都圏以外では一部の大学が実施している他はあまりなかった。1981年にはテレビ・ラジオ放送による教育をおこなう放送大学が設立され、各地に学習センターが設置されたものの、それ以外にはあらたに通信教育をおこなう大学の数は伸び悩んだ。
しかし90年代にはいり、少子化による学校経営への影響や生涯学習への意欲の高まりからか、少しずつ日本全国の大学で通信教育をおこなう大学が増加した。また2000年代になってからは、新たな試みとしてインターネットを活用し、動画配信にて講義を視聴させたり、各種プログラムを演習させたりというe-ラーニングによる通信教育をおこなう大学がでてきている。
大学院の通信教育課程については長らく認められていなかったが、1998年3月に大学院設置基準が改正され、通信制大学院の開設が可能となった。1999年4月に修士の学位を授与する課程が設置された(最初に設置したのは日本大学・佛教大学・明星大学・聖徳大学)。次いで2003年には博士の学位を授与する課程も設置された。
現在、日本における大学通信教育の専攻分野は、経済学、法学、文学、教育学(主に教員養成)、臨床心理学など、人文科学系・社会科学系などの文科系の分野が中心になっている。
ただし、大阪芸術大学・京都造形芸術大学・愛知産業大学・武蔵野美術大学などでは、芸術系の学部が通信教育を行っている。また、倉敷芸術科学大学・北海道情報大学などでは、通信教育によって情報科学関係の科目も学ぶことが出来る。
さらに近年は、健康福祉学、社会福祉学などの専攻も増えてきている。
授業の方法には次のものがあり、大学通信教育設置基準や短期大学通信教育設置基準に定めがある。大学は、次の授業を日本国内または日本以外の国において履修させることができる。
学費は、各大学によってまちまちであるが、一般的な私立大学の通学課程に比べると格段に安い。そのため、日本の格差社会化による「学費が払えない」という理由で、大学の通学課程での高等教育を受けられない層の増加が懸念される中、学費が低廉な通信教育課程は、現在は「生涯学習」という性格が強いが、通学課程同様学位が取得できるため、将来高等教育の重要な柱となる可能性もあると言える。
2009年より教員免許更新制が実施されることになり、通信教育課程のある大学はそのノウハウを生かした教員免許状更新講習の開設を始めた。更新講習は、原則として教員免許状を有するすべての教職員が10年おきに受講しなければならない制度で、通学が出来ない教職員のために通信制による受講も認められている。 また、教員免許更新制では、他教科や上位免許状等を取得(不足単位を通信教育等で取得し教育職員検定を受検)すれば、更新講習を受講しなくても、現に有する全ての免許状の有効期間が延長されるしくみにもなっている。
以下のリストは便宜上、財団法人私立大学通信教育協会(“通信教育課程を設置する私立大学相互の協力によって、大学通信教育の振興を図ることを目的とする”団体)の加盟校・非加盟校に分けているが、加盟か非加盟かを問わず、すべて文部科学省に認可された正規の教育課程であることに注意されたい。
私立大学通信教育協会では、通信教育を希望する人を対象に加盟校による合同入学説明会を各地で行っている。説明会では各校の職員による相談を受けられるほか、案内資料を入手することが出来る。実施予定は、同協会のサイトを参照されたい。
なお、私立大学通信教育協会への加盟にあたっては、学部の課程・大学院・短期大学はそれぞれ別個に扱われている。